私を育ててくれたシステムたち その3

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このシリーズはソリットコンサルティング代表吉岡大介が
今までのキャリアで携わってきたシステムたちと、その開発を
通して吉岡大介が成長する様を記した実話に基づくものがたりである
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※期間
1998年11月~1999年2月

※システム名
音楽出版会社向け音源管理システム

※規模・構成
SE・PG3名 WindowsNT Microsoft Access
他社構築システムのトラブル対応案件

※ポジション
サブSE(ほぼPG)

詳しくないのでざっくり言うと、ご存知のように楽曲一つ一つには著作権があるが、マンガで歌の歌詞を引用するシーンにはJASRACの著作権番号が隅のほうに書かれているのを目にしたことがある人も多いと思う。これに関係するシステムの話。

テレビ局、ラジオ局で流れる音楽や効果音は、普段そういう目で見てないので意識してないが数にすると大変なことになるのは想像に難くない。ではそれらの著作権管理は?と思うと誰かが大変な思いをして申請して許可してもらって番号を知らせて、請求されて支払って・・・。実はそれだけで会社ができるほどの量になる。そういう会社のそういう音源を管理するシステムが、業務が特殊だけあって仕組みを理解し切れてない部分もあり、他社が作ったものだけど、何とかマトモにして欲しいと話があったようだ。

すでにできあがっていることと、時間が勝負のプログラム修正なので、仕様はほとんど覚えていない。ひたすらメインSEの人の「アレがこうなるように直して」という人間の理解できる言葉の指示に従って、それをプログラムではどう表現するか解釈し修正を加える作業、またはその逆で、プログラムを読解するとコレコレをやりたいようですヨ、と伝える作業を任された。

ACCESSというのはMicrosoft Officeの中では異色の、何をするのかよくわからないソフトの筆頭だと思うが、なかなか立派なもので、頑張ればデータベースから画面から帳票まで一通りのものが作れてしまう。しかも何とかしてプログラムを書かないように、たいていのことはマウス操作や簡単なキーワード入力でできるようになっている。でもそれは、プログラム書けばできることのほんの一部だったりするから、プログラマにとっては逆に途中までマウス入力で済ませるか、最初からプログラムにしてしまうか、余計な悩みを抱えてしまうことになる。

プログラムには普通、機械と同様に設計書があって、担当者や、今回のように会社が変わっても理解できるように、人間の分かりやすい言語で仕組みが書かれている文書が存在するものだが、なんとこのシステムはそういうドキュメントが一切存在しなかった(^_^;) 原因はいろいろあると思うが、プログラマが一人で書き上げる時は自分の中ではつじつまがあっているロジックをわざわざ紙に起こすのは非常にめんどくさい、というのもあるだろう。また予算の関係で省略する(時間がかかる=費用がかさむ)と言う場合もある。今回は後者の理由が大きいと思われた。ACCESSというツールを選択しているのはそもそも安く仕上げる意図があるからである。

この、新人研修で習った「ドキュメントはキチンと残しましょう」という手順を思い切り無視した、しかしお金もしっかりとって納品され、稼動しているシステムがこの世に存在することに衝撃を覚えたウブな私は、マウス入力部分ではどうやっても説明できないトリッキーな動きをする正体を突き止めるためにプログラムコードを確認したり、ACCESSのクセとも言うべき中途半端な便利機能に悪戦苦闘することになった。

おそらくもともとアバウトな業務で、取引先との関係でルールもまるで違うのを無理やりプログラムにすると、ある特徴的な現象が起きる。それは、「もし~だったら~する」という条件分岐と言われる記述が恐ろしく発達するのである。この条件分岐は、タテ方向に長くなる場合もある。つまり「もし100円~199円だったら」「200円から299円だったら」・・・と特定の項目の場合分けが連なるケース。さらにヨコ方向にも発達する。つまり「もし女性で、さらに既婚者で、さらに子供が男の子で、さらに幼稚園に通ってる時は~する」みたいな、条件判定の項目がどんどん増えるケース。

それが見事に絡み合って、画面から離れてボンヤリ眺めると、巨大なフラクタル構造をした印刷すると何ページにも渡る、芸術作品のように見える文字の集合体を目の前に、感覚を扱う右脳が大いに刺激され、「あーなんかキレイかも・・・」と思ったあと、ふと我に返って電子顕微鏡みたいにズームアップし、ひとつひとつを読解する作業を延々と繰り返した。

実はその結末としてどうなったのかも良く覚えていない。なんとか動くようにはなったのかもしれない。ただ、

・ツール(プログラム言語)のクセというものを思い知らされた

・ドキュメントを残すのは大事だと身を持って実感した

・条件分岐をスマートに書く訓練をいやというほどやった

というこれまたSEの基本中の基本を早いうちに学ぶことができたことは大きかった。

そういえば、請求書の宛名の位置を微調整する作業をやっていたときのこと、紙に印刷して担当の方にチェックをお願いしたら、その人はテテテっと部屋からいなくなり、しばらくしてイソイソと戻って「うーんあと1mmくらい右」とか言うので、蛍光灯に透かして定規で測ってきっちり1mm右にすると、又同じ所作を繰り返し「行き過ぎたから0.5mm戻して」とか言う。あまりにも繰り返すので思わず「テテテっと何をやってるんですか???」と聞くと、今度は手に窓空き封筒を持って帰ってきた。どうやら窓にキッチリ収めたかったようだ。はやく言ってくれー、そしてその封筒最初から俺に渡せや~!と思ったものだ。

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